灘の酒造り唄保存会の結成

昭和48年11月、丹波杜氏組合の畑栄一氏、酒井善一郎氏などにより「酒造り唄」と題する冊子が刊行されました。

これは昭和30年代から始まった酒造りの近代化によって、従来すべてが手作業で気温に左右される酒造りが、エアコンディションによる季節を問わない酒造りの出来る化学工場に変り、杉の樽がステンレスタンクなどになり、搬送はパイプ、運転制御はガラス張りの中でボタンを押すだけと言う様な醸造法になりました。

先輩から後輩に、親から子に、口から口へと伝承されて来た約400年の伝統ある灘の酒造り唄」は、民謡で言う労作唄です。機械化により唄われなくなった酒造り唄の、忘れられてゆくことを惜しんで、前記杜氏組合の方々が「酒造り唄」を刊行されたのですが、この酒造り唄の忘れられてゆくことを惜しむのは酒造りにたずさわった杜氏の人達だけではありません。

土蔵造りの大きな酒蔵から朝夕聞かれた酒造りの唄声は、灘の冬の風物詩として、この地方に育った人々のなつかしい思い出であり、この唄が忘れられることが惜しまれていました。そこで、灘の酒造り唄を郷土芸能として残したいと言う市民の発案で、灘の酒造り唄を保存し、唄い広めようと言うことになりました。

しかし、実際の作業唄として杜氏さんや蔵人さんに唄われていた酒造り唄を、一般に唄われている民謡を同じ様に唄うためには思いがけない困難がありました。まず唄う人によって相当の違いがありました。また、もうすでに唄う人が居ないか、又はどこに居られるのかわかりません。このため度々丹波に行き何人もの人達を訪ねて録音して来なければなりません。また純粋な作業唄である酒造り唄は伴奏という言うものが全くありません。民謡愛好家の方々に愛唱される様、前後奏を作曲し原型をなるべくこわさない用採譜し、三味線、尺八の伴奏をつけました。

こうした努力の結果、昭和50年2月18日、丹波杜氏組合・灘五郷酒造組合の代表者の方々のご臨席を頂き、約300年の星霜を経た酒蔵、菊正宗酒造記念館に於いて「灘の酒造り唄保存会」が結成されました。

続いて11月9日、御影公会堂に於いて「灘の酒造り唄保存会結成記念発表会」が開かれました。このニュースはマスコミにも大きく採りあげられ、神戸・朝日・読売・酒類業界紙の各新聞並びにNHKテレビ・ラジオ関西・サンテレビ・朝日放送・神戸市のPR誌「こうべ」等に報道され、華々しいスタートを切りました。

灘の酒造り唄保存会の歩み

昭和50年 2月18日 菊正宗記念館において結成式

昭和51年 5月16日 神戸まつりパレード初参加

昭和52年 1月15日 譜面付き冊子出版

昭和52年 3月24日 水添唄発掘(丹南町・現篠山市)

昭和52年 8月19日 兵庫県酒造大学夏期講座(篠山小学校)

昭和53年 2月12日 市民対象第1回講習会(東灘文化センター)

昭和53年 7月23日 テイチクレコードよりレコード全国発売

昭和53年 9月26日 文化庁主催日本民謡まつり(国立大劇場)

昭和53年 9月29日 日本酒の日制定記念式典(東京帝国ホテル)

昭和55年 7月13日 兵庫県文化百選認定

昭和59年 12月9日 カセットテープ出版発売

平成10年 10月25日 朝の謡物(うたいもの)発掘(篠山市)

平成11年 10月17日 CD化録音(灘泉酒蔵)

平成12年 1月14日 市民教育講座(魚崎中学校)

平成17年 7月2日 愛地球博 日本伝統芸能十八撰出演

平成22年 8月 文化庁ふるさと文化再興事業決定

平成24年 3月 DVD完成「文化庁地域伝統文化伝承事業」

平成26年 4月 神戸市教育委員会(後援)より神戸市立小中学校へDVD配布

平成27年 9月 灘の酒造り唄保存会結成40周年を記念して「神戸ビエンナーレ2015」の協賛事業に参加